星野道夫と縄文

このページは、下記の縄文ファイル226号掲載のWEBライターによるメタ考古学エッセイの
連動ページです。

第2回 今もなぜ縄文?

モンゴロイドのルーツに関心をもっていた星野道夫さんがなくなって、20年になる。

アラスカの写真で知られている故・星野道夫さんが日本人のルーツに関心を抱いていたことは、「森と氷河と鯨~ワタリガラスの伝説を求めて」(世界文化社発行)を読むとよくわかる。

北米からシベリアにかけてワタリガラスの神話があり、星野氏は、その神話を抱きながら、モンゴロイドが新大陸へ移動したのではないかと考えていた。陸続きだった今のベーリング海峡を渡ったルートの他に海流にのって北西海岸にたどり着くルートもあったのではないかとも考えていたようだ。

星野道夫氏をひとつの軸として展開するドキュメンタリー映画「地球交響曲第三番」を撮った龍村仁監督は、エッセイ「地球交響楽第三番 魂の旅」(角川書店)の中で三内丸山遺跡についてこう語っている。

「一万年前の記憶が甦るような映画にしたい」というヴィジョンが生まれたのは、「星野道夫の出会いと数年前に始まっていた青森県三内丸山縄文遺跡の発掘があったからだ」。ロケの最後は、日本人のルーツに関心を抱いていた星野道夫を三内丸山遺跡で撮りたいと考えていて、約束していたという。

監督はテクノロジーについて、「誰もが、いつでも、どこででも、間違いなく、繰り返し、安全に、簡単に同じことができるようになりたい」に応える科学技術の道を選んだ結果、「環境問題、異常気象、不可解な事件、人心の荒廃が起こってきた」。これらはみな、「自然を“物”として見、“物”として扱ってきた我々の生き方に起因しているのではないか」と述べる。「今問われているのは、我々ひとりひとりの自然観、生命観、価値観なのだ」としめくくる。映画には、その問いかけに応えるように縄文人が抱いたであろう自然の叡智と世界観を美しい映像で描きだされている。

星野氏が日本人のルーツに関心をもっていたことについて、雑誌「コヨーテ」で生前の星野氏に取材をしたスイッチパブリッシングの編集長・新井敏記氏にも聞いたことがある。

星野氏はアラスカでアイヌの人たちの写真を見せた時に、アラスカのインディアンの人たちに着物の文様や物語に共通したものがあり、同じ文化を共有しているといわれたことがとても気になっていたらしい。カラスにまつわる神話は、アラスカだけでなく、熊野などにも残っているため、そのあたりから日本人の祖先がどういう旅をしてきたのかがわかるのではないかと考え旅をしていたのだという。

今年は、没後20年であることもあり、この夏、スイッチバブリッシングから星野道夫特集が雑誌「コヨーテ」で組まれた。同氏が関心を寄せたトーテムポールや彼らの世界観を語る神話が美しい写真とともに掲載されている。

この特集は、博物館でなく、古いトーテムポールがそのまま残されているハイダ・グアイならではの取材である点が特に素晴らしい。様々なトーテムの写真掲載だけでなく、それぞれの諸島にどのように立ち、どのような歴史、状況があるのかなどを詳細に紹介。トーテムが近親婚などを避け、社会構造を支える基盤になっていることなども解説。星野さんと生前、親交があり、星野氏が亡くなった後、アラスカにトーテムポールを立てるプロジェクトをプロデュースした写真家・赤阪友昭氏の記事であるだけに読み応えがある。

赤阪氏は現在、日本各地を訪れ、山や森の残された原初の信仰、縄文文化や祭祀を撮影・取材。神話についてお聞きしてみると「口承は、言葉が変化しても語り継ぐことができるので、神話の中には確かに遠い記憶が刻まれている」と話してくれた。

特集には北西海岸に伝わる神話なども掲載。そこにある木への特別な想いが、縄文の世界観と相通じるものがあってひきこまれる。故・星野氏を悼みながら、縄文の精神世界を改めて考える契機になった。

 

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