三内丸山遺跡の魅力と活用   岡田康博

三内丸山遺跡発掘調査が始まった1992年からこの遺跡に携わり、現在、北海道・北東北縄文遺跡群の世界遺産登録を進めている岡田康博氏に縄文文化の魅力や遺跡の活用についてお話をうかがいました。

 

‐‐ いろいろな方の三内丸山遺跡への関心はどのようなものですか?

遺跡の公開がはじまってからもう20年が経ちますが、見学者の方々を見ていると時間の経過とともに違ってきています。発掘当初は、話題になった六本柱の大型掘立柱建物を見に来られる方がほとんどでしたが、遺跡公園として整備されたこともあって現在は遺跡そのものを見学したり、土偶や縄文ポシェットを目的に来られる方々もいます。見学の動機や目的が多様になっていると思います。でも変わらず多い質問は、何を食べたとか、どんな服を着ていたとか、今の自分の生活に関係することです。

 

‐‐ 北海道・北東北の縄文遺跡に共通な特徴は何でしょうか?

下北半島の大間町から北海道はすぐそこに見えます。当然、縄文時代にも津軽海峡を挟んで行き来がありました。日本海から太平洋へと潮の流れは早いですが、季節や風の状況を判断し、ある程度流されることを想定して、例えば北海道の西側から出発して青森の東側へ上陸するなど工夫して渡ったと思います。そういうこともあって道南地方と本州北部は縄文時代全般にわたって同じ地域文化圏を形成していました。縄文時代前期から中期にかけては円筒土器文化圏となります。でも北海道は青森に比べて土偶が少ないなどの特徴があり、それぞれの地域性というか個性はしっかりとあります。

日本海を利用して交易が盛んであったことなどは、この地域の特徴だと思います。新潟の糸魚川産のヒスイがたくさん運ばれています。この地域は大きな内湾や入り江に恵まれていますし、内陸への河川がある点で、交流・交易に恵まれた立地条件にあると思います。

 

‐‐ 環状列石に関してはいかがですか?

縄文時代後期の大規模な環状列石の存在は、北海道・北東北の特徴といえます。これだけの大規模な環状列石は同じ時代日本列島の他の地域には見られません。そしてこのような環状列石が出現する背景も、寒冷化による食料の減少や集落の拡散・分散とともに地域社会で構築、維持管理する施設となった、など出現のストーリーも説明できると思います。

 

‐‐ 世界遺産としての縄文文化の価値はどんなところにあるのでしょうか?

まず1万年以上という大変長く続いたということであり、狩猟採集民で定住を達成したこと、持続可能な資源利用など自然とのふれあい方が上手くいっていたことなどがあります。当然現代日本文化の基層ともなっています。縄文文化はどの地域でもすばらしいものですが、北海道・北東北の地域で世界遺産登録を進めているのは、縄文遺跡が多く、しかも縄文文化を語る上で欠かすことのできない重要な特別史跡や史跡が多くあるということです。良い遺跡が良い状態で保存され、しかも積極的に整備、公開されています。景観も縄文の雰囲気を体感することができます。さらにこの地域の遺跡でもって縄文文化の変遷もしっかりと示すことができます。そして登録への強い決意と覚悟があるということです。

 

‐‐ 遺跡はその活用という点でも注目されていますが、誰でも活用できるのでしょうか?

三内丸山遺跡は、はじめから多くの方々に活用してもらいたいという方針でしたから、イベント開催など、どなたでも活用することができます。気軽に三内丸山遺跡縄文時遊館にご相談いただければと思います。営利目的でない場合には無料となりますし、火を使うことも消防署に届け出を出せば可能です。展示室も自由に撮影できますし、それをブログなどにアップするのもかまいません。

大きなイベントなどでも活用していただいています。昨年、あおもり縄文大使になっていただいた秦基博さんやレキシさんのコンサートも開催されました。多くの方々に遺跡に足を運んでいただき遺跡にふれてもらうことが大事です。遺跡の活用の仕方はそれこそアイデア次第だと思います。新たな活用の仕方が期待されます。

 

‐‐ 今後、三内丸山遺跡で、より多くの市民が楽しめるような計画はありますか?

2018年度に今あるガイダンス施設である縄文時遊館を増築し、リニューアルします。今年秋には着工する見込みです。国宝や重要文化財を展示できる企画展示室を新たに作りますし、収蔵展示室や整理作業室も見学者の方々が見ることができるようにします。調査研究、情報発信、そして交流の拠点となる「縄文センター」としての役割を果たすことになると思います。

遺跡は現地でなければ実感できない魅力があると思います。「住居とお墓の位置関係など当時の距離感がよくわかって新たな発見がある」と皆さんおっしゃいます。竪穴式住居などは、縄文人の身長などを推定して復元しています。縄文人の目線を大事にしているということです。さらに「静か」とか「広い」とか「風がここちよい」とか「場や空間」として楽しむ方もいます。多くの方々に遺跡を楽しんでいただくために日々、皆さんの声をお聞きし、いろいろな面で工夫を重ねています。企画展示や体験メニュー、講座も充実しています。ボランティアガイドの案内も楽しみです。それもあって年間30万人の方に来ていただけるのだと思います。

(2016.3.26  三内丸山遺跡でインタビュー /文・写真 大日向明子 )

 

 

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※写真は三内丸山遺跡(左)と岡田康博氏(右)

【岡田康博氏のプロフィール】

1957年弘前市生まれ。青森県内の遺跡調査を多数手がけ、92年から三内丸山遺跡担当。文化庁文化財調査官などを経て、現在、青森県企画政策部世界文化遺産登録推進室 参事。著書に『三内丸山遺跡』(同成社)、『遥かなる縄文の声』(NHKブックス)などがある。